「ちゃんと話を聴いているつもりなのに、うまく伝わらない」
「つい正しいことを伝えたくなってしまう」
子育てをしていると、多くの方が一度は感じることではないでしょうか。
スクールカウンセラーとして学校現場で子どもや保護者の声に触れる中で、私が強く感じているのは、話すことよりも前に“どう聴くか”が、親子関係の土台になるということです。
この記事では、子どもの話を聴くことの意味を、アドラー心理学の視点を土台にしながら、日常の中で無理なく取り入れられる形で整理していきます。
子どもの話を聴く3つの目的

① 親が子どもを理解するため
子どもの話を聴く一番大切な目的は、親が子どもを理解することです。
親子は近い存在ですが、
- 親と子は別の人格をもち
- 別の考えをもち
- 別の感情をもち
- 別の行動を選びます
親の価値観と子どもの価値観は同一ではありません。
だからこそ、
- 子どもがどんな出来事を体験したのか
- それをどう受け止め、何を感じ
- これから何をしようとしているのか
を知ろうとする姿勢が、関係の出発点になります。
子どもの話を聴くとは、
- 子どもの耳で聴き
- 子どもの目で見て
- 子どもの心で感じようとする
そんな「主観的な世界」を理解しようとする営みでもあります。
② 子どもが自分自身を理解するため
子どもの話を聴くもう一つの大切な目的は、子ども自身が自分を理解していくことです。
子どもは、
- 何を体験したのか
- それについてどう考え
- どんな気持ちを抱き
- これからどうしたいのか
を、話しながら少しずつ整理していきます。
安心できる聴き手がいることで、
言葉は自然と明確になり、自分の考えや感情に気づいていきます。
子どもの考えや行動には、必ずその子なりの「良い意図」があります。
その意図が見えてくると、
子どもは自分なりの解決方法を思いつく力を取り戻していくこともあります。
③ 親子の間に心の架け橋をつくるため
三つ目の目的は、親子の関係そのものを育てることです。
子どもの話を丁寧に聴き、
行動や言葉の奥にある思いや意図を理解しようとすると、
親は次第に、子どもの健気さや懸命さに気づいていきます。
一方、子どもは、
「この人は自分の話をちゃんと聴いてくれる人」
と感じることで、親を信頼できる存在として認識するようになります。
良い聴き手であろうとすること自体が、親子の間に心の架け橋を架けていくのです。
子どもが話したくなる聴き方の工夫
「聴」という漢字には、
耳・目・心が含まれていると言われます。
耳で音を聴くだけでなく、
まなざしを向け、心を寄せて聴くこと。
ここでは、日常で意識しやすいポイントをいくつかご紹介します。

① うなずく・あいづちを打つ
子どもの方を向き、うなずいたり短いあいづちを打ちながら聴くことで、
「聴いてもらえている」という安心感が伝わります。
② 子どもの言葉を繰り返す
- そのまま短く繰り返す
- 少し要約して返す
内容を確認し、共有することにつながります。
③ 最後まで聴く
途中で意見を言いたくなっても、まずはぐっとこらえ、
子どもの話を最後まで聴いてみましょう。
「もう少し話してもいい?」
「まだ続きがある?」
そんな一言が、子どもの思考を深める助けになることもあります。
④ 開いた質問を使う
「いつ」「どこで」「何があったの?」など、
自由に答えられる質問は、
子どもの考えや感情を広げやすくなります。
⑤ 待つことも聴くこと
考えている途中で黙ってしまうこともあります。
そんなときは、急かさず、20秒ほど待ってみましょう。
言葉にならない時間も、
子どもにとっては大切な整理の時間です。
おわりに
子どもは、親とは違う人格をもつ一人の人です。
親の願いや考えを伝えることはできますが、
それをどう受け取るか、どの道を選ぶかは、子ども自身のものです。
だからこそ、 「正しく導くこと」よりも、 「理解しようと聴くこと」が、親子関係の安心感を育てていきます。
日々の忙しさの中で、完璧に話を聴くことは難しいかもしれません。 それでも、
- 少し目を向ける
- 途中で遮らずに聴いてみる
- すぐ答えを出そうとしない
そんな小さな積み重ねが、親子の間に信頼という土台をつくっていきます。
「聴く」という関わりは、特別な技術ではなく、 今日から、今この瞬間から始められる関係づくりです。
※本記事は、学校現場および心理支援の実践をもとに構成しています。
参考文献:日本アドラー心理学会 EOLECT

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